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三、奇談の二 古墳
風の感触が変わり、秋の気配が色濃くなってきた深夜の事である。
『伸太郎さん…。』
『伸太郎さん…!!』
時刻は丑三つ時、声の主は勿論、鳴滝彦である。
この所現れなかったので、すっかり油断して熟睡していた伸太郎は、思い切り不機嫌で険悪な表情のまま眼を開いた。
「鳴滝彦ぉ、夜中に寝てる時は起こすなって言っておいただろう!?」
言いながら鳴滝彦を睨み付けた伸太郎は、もそもそとベッドの上に起き上がり、眼鏡を鼻の上に乗せた。 不機嫌かつ険悪な表情の伸太郎を前にした鳴滝彦はこう言った。
『いつも言ってますけど、私達のような霊体は、今頃の時刻が一番活動しやすいんですもん。』
鳴滝彦の言い訳に苦笑いしながら、伸太郎はベッド横のテーブルにある時計を見た。
「あぁ、丑三つ時かぁ。
で、今夜は何の用だい?
また妖でも現れたの?」
伸太郎と鳴滝彦は、ついひと月程前に猫又という妖を浄霊していた。
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