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「さて、と。
お不動様へのご挨拶も済んだ事だし、その猫又さんに会いに行こうかね。」
そう言いながら、伸太郎はウエストポーチから略式の輪袈裟と数珠、独鈷杵を取り出し、輪袈裟は首に掛け、数珠は左手、独鈷杵を右手に持って、不動尊裏の塚山へ入っていった。
鳴滝不動尊裏の塚山は古くからこの地方の豪族の古墳であると伝えられているが、未だに正式な発掘調査は行われてはいない。
地元の者は、この塚山を稲荷塚っ呼んでおり、頂上には小さな稲荷社が祀ってある。
伸太郎と鳴滝彦が稲荷社へと続くほの暗い石段を上がっていくと、びゅーっと一陣の生ぬるい風が吹いた。
『伸太郎さん、出ます!!』
鳴滝彦の引きつった声に、伸太郎も一瞬身構えた。
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