二、奇談の一 猫又

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 伸太郎は不敵な笑みを浮かべた。  「そうだよ猫又。お前くらいなら退治できるって意味が分かったかい?」  体勢を立て直した猫又は、いまいまし気に呻いた。  『うぬ…小童め。まさか法力を持っていようとは油断したわい…。五百年を経た儂を弾き飛ばすとは、中々の法力じゃ。』  五百年と聞いて、今まで恐々としていた鳴滝彦が、急に勢い付いたように口を開いた。  『何だい、たった五百年の妖かよ! 私の半分もないじゃないか!! 伸太郎さん、退治しちゃいましょうよ!』  急に元気になった鳴滝彦の態度に苦笑しながら、伸太郎は言った。  「さあ、どうしようかねぇ。 浄霊して還るべき所へ還すか、除霊してここから追い出すか、慰霊して無害な霊にするか…。 猫又、どれがいい?」  伸太郎の自信に満ちた言葉に、猫又はいきり立った。  『小童、良い気になったものよ! 退治するならばしてみるが良いっ!!』  全身の毛を逆立て、金色の眼をくわっと見開いた猫又は、再びその太い前足を振り上げ、銀白色の爪を伸ばし身構えた。
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