20人が本棚に入れています
本棚に追加
唐突な鳴滝彦の問い掛けに、伸太郎は少し困ったような顔をして言った。
「そうかも知れないね。鳴滝彦が悪しき霊じゃなくて、本当に良かったよ。
鳴滝彦は、僕の最高のパートナーだからね。」
伸太郎の返事に、鳴滝彦は嬉しそうな、照れたような表情になった。
千年も前に、どのような理由でこの世を去ったのかは分からないが、あどけない笑顔で無邪気に振る舞う鳴滝彦という護法童子に、伸太郎は出会えてよかったと思った。
この世の者と、この世ならざる者にも、やはり相性というものがある。
伸太郎と鳴滝彦は、阿吽の連携で今までやってきたのだった。
『伸太郎さん、そろそろ夜明けですねぇ。』
ふわふわと伸太郎の跡を追いながら、鳴滝彦は呑気に言った。
東の空を見ると、夏の終わりの明け方の空が拡がっていた。
二、奇談の一 猫又 終
最初のコメントを投稿しよう!