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週が変わって水曜日、鳴滝不動尊裏の稲荷塚発掘調査の日である。
近隣各地からやって来たのだろうか、数十名の古墳マニア達の中に伸太郎の姿があった。
朝だというのに、珍しく鳴滝彦も伸太郎と一緒にいる。
そこへ宗源の孫の宗太が声を掛けて来た。
「伸太郎先輩もやっぱりサボったんですね♪」
宗太の言葉に、伸太郎が応える。
「お祭り好きの宗太と違って、僕は学術的好奇心で来てるんだよ。」
伸太郎の、宗太を馬鹿にしたような言葉に、宗太は反論した。
「おれだって学術的な気持ちですよー。
何せ、小さい頃からの遊び場だったんですからねっ♪」
やれやれといった伸太郎の後ろから、鳴滝彦が宗太に声を掛ける。
『宗太、おはよ!』
宗太も幼い頃から霊感が強く、両親の元を離れて祖父、宗源の元で修業をしていたので、鳴滝彦の姿が見え、話が出来るのであった。
「お、鳴滝彦。
朝から珍しいね♪」
無意味に機嫌の良い宗太に、鳴滝彦も楽しそうである。
『宗太久し振りだねー。』
二人のやり取りを見ていた伸太郎は、やれやれといった表情で稲荷塚の方へ眼を向けた。
そうこうしている内に、山吹町教育委員会などの関係者がやって来て、見学者達に説明を始めた。
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