三、奇談の二 古墳

5/14
前へ
/50ページ
次へ
 週が変わって水曜日、鳴滝不動尊裏の稲荷塚発掘調査の日である。  近隣各地からやって来たのだろうか、数十名の古墳マニア達の中に伸太郎の姿があった。 朝だというのに、珍しく鳴滝彦も伸太郎と一緒にいる。  そこへ宗源の孫の宗太が声を掛けて来た。  「伸太郎先輩もやっぱりサボったんですね♪」  宗太の言葉に、伸太郎が応える。  「お祭り好きの宗太と違って、僕は学術的好奇心で来てるんだよ。」  伸太郎の、宗太を馬鹿にしたような言葉に、宗太は反論した。  「おれだって学術的な気持ちですよー。 何せ、小さい頃からの遊び場だったんですからねっ♪」  やれやれといった伸太郎の後ろから、鳴滝彦が宗太に声を掛ける。  『宗太、おはよ!』  宗太も幼い頃から霊感が強く、両親の元を離れて祖父、宗源の元で修業をしていたので、鳴滝彦の姿が見え、話が出来るのであった。  「お、鳴滝彦。 朝から珍しいね♪」  無意味に機嫌の良い宗太に、鳴滝彦も楽しそうである。  『宗太久し振りだねー。』  二人のやり取りを見ていた伸太郎は、やれやれといった表情で稲荷塚の方へ眼を向けた。 そうこうしている内に、山吹町教育委員会などの関係者がやって来て、見学者達に説明を始めた。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加