三、奇談の二 古墳

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 だが、古墳の入り口はバリケードで塞がれ、中へ入る事は叶わなかった。  「まぁ、当然だよなぁ。 悪質なマニアだの何だのが荒らしに来るかも知れないもんなぁ。」  自分の事は棚に上げて、伸太郎は残念がった。  『伸太郎さん、私が中へ入ってみましょうか?もしかしたら結界も解けてるかもしれませんからね。』  鳴滝彦が珍しく機転をきかせた。  「頼んだよ、鳴滝彦。」  はーい、とのんびりした返事をしながら、鳴滝彦さすうっとバリケードを擦り抜けていった。 五分程経って、鳴滝彦が戻ってきたのだが、少し様子がおかしい。  「どうした、鳴滝彦?」  伸太郎の問い掛けに、鳴滝彦は情けなさそうな表情で古墳の入り口を振り返った。  そこには、髪を美豆良(みずら)に結い、生成り(きなり)の筒袖の衣(きぬ)にゆったりとした褌(はかま)を着け、倭文衣(しづり)の帯に頸珠(くびたま)、手玉、足結(あしゆい)を施し、皮履(かわぐつ)を履き、太刀をおびた古代の貴人が現れた。  『吾(あ)が眠りを醒めさせしは汝(なれ)か?』  やはり埋葬者の霊のようである。  「ぅわわっ、中の人が起きてきちゃったよ。」  伸太郎は、古墳の入り口に立つ、いにしえの貴人の姿に慌ててしまった。 ここは上手く胡魔化すしかない。  『今はいつの世ぞ?』  いにしえの貴人の問いに、平静を装った伸太郎が応える。  「吾(あ)が君が身罷られてから、千と三百年程の世が経っております。」  伸太郎は、古文と現代語をない交ぜにして話をした。  『左様か。さすれば汝(なれ)は未来の者か。』  このいにしえの貴人には、穏便に戻ってもらわねばならない。  伸太郎は必死に古代の言葉を考えながら、いにしえの貴人と話しをした。
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