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「おお、伸太郎君!
学校から帰ったばかりだと言うのに済まんなあ。」
伸太郎は宗源の部屋へ通され、茶が出されると、困り果てたような面持ちで、宗源は伸太郎の前に座った。
「和尚、一体どうしたんです?」
憔悴し切った様子の宗源に、伸太郎は唯ならぬものを感じながら問うた。
「鵺がな…。
鵺が出たらしいんだよ。」
宗源は信じられないような名を伸太郎に告げた。
「ぬ、鵺ですって!?」
伸太郎は驚いて声を荒げた。
鵺というのは、平安末期に都の人々を恐怖に陥れた妖である。
頭はサル、体はタヌキ、手足はトラ、尾はヘビ、鳴き声はトラツグミと言い表される妖で、源頼政によって退治されたと言われている。
伸太郎が口を開いた。
「和尚、鵺は源頼政に退治された筈ですよね?それが何故現代に?」
しばしの沈黙の後、宗源は重い口を開いた。
「いや、儂にもわからん…
儂等の与り知らぬ世界で、何かが起こっているのかも知れんなあ。」
通常、浄化されたり退治された妖等が、再びこの世に現れる事はない。
しかし、鵺だけは度々この世に復活しているのである。
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