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「で、何か急用ですか、鳴滝彦クン?」
皮肉を込めてわざと丁寧に尋ねると、鳴滝彦は思い出したといった表情になった。
『そうそう、出たらしいんですよ、伸太郎さん!』
ベッドサイドのテーブルに置いてあったペットボトルの水を一口飲むと、伸太郎は口を開いた。
「お前はいつも主語がないんだねぇ。で、何が出たらしいんだって?」
気の抜けたような伸太郎の様子に、クスクス笑いながら鳴滝彦が言った。
『猫又が、出たらしいんですよ。』
伸太郎の眠気が一気に覚めた。
猫又というのは、猫が年を経て尾が二又に分かれ、人に害を為すという妖(あやかし)である。
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