二、奇談の一 猫又

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 「で、何か急用ですか、鳴滝彦クン?」  皮肉を込めてわざと丁寧に尋ねると、鳴滝彦は思い出したといった表情になった。  『そうそう、出たらしいんですよ、伸太郎さん!』  ベッドサイドのテーブルに置いてあったペットボトルの水を一口飲むと、伸太郎は口を開いた。  「お前はいつも主語がないんだねぇ。で、何が出たらしいんだって?」  気の抜けたような伸太郎の様子に、クスクス笑いながら鳴滝彦が言った。  『猫又が、出たらしいんですよ。』  伸太郎の眠気が一気に覚めた。  猫又というのは、猫が年を経て尾が二又に分かれ、人に害を為すという妖(あやかし)である。
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