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自宅へ帰りつくと一番にエアコンを作動させ、凛の差し入れを冷蔵庫へ入れそのままシャワーを浴びる。出てきた頃には快適な温度となった室内で、冷えたビールを胃に流し込んだ。クローゼットから画材を引きずり出し、テーブルに広げる。
1人きりの夜に絵を描くのが癖になっている。誰に見せるわけでもない唯の時間潰し。その割には隅々まで丁寧に描きあげてしまう…もしかしたら大学時代の癖かもしれない。
そんな絵はもう200枚くらい貯まっている。大学をやめてからもう7年。その間続けてきたのだ。200枚は少ない方だろう。
似たような静物画やデザイン画を大事にしまっておく辺り、自分の女々しさを感じる。
捨てたくても、捨てられない。まるで、それを捨ててしまう事によって、何もない吾妻猛になることを、心のどこかで恐れているように。
「それでは今の自分に何かあるとでも言いたげだな」と、自嘲気味に笑う。
それでも、白い紙にペンを滑らせている間は何も考えずにいられた。
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