序章

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 風を切って迫る見習い兵士を 見て、嬉しそうに口笛を吹く騎 士。 片手で木の棒を持ち一突きにし ようと直進したが、騎士はそれ を軽くいなし、自らの上体を右 にずらす。 一瞬目が合い、見習い兵士はそ の眼光に怯んだ。 騎士はいなした位置からそのま ま脇腹に目標を据え、突きを繰 り出す。 やはり、 二分も保たない手合いだった、 と周りの兵士達が息を吐いた次 の瞬間、見習い兵士に当たる筈 の木の棒が上を向いていた。 騎士も何が起きたのか目を丸く し、一度後ろに下がる。 木の棒が上へ上がったのは、見 習い兵士がとっさに膝で突き上 げたからだと騎士が気付いた時 には、見習い兵士は騎士に一撃 を入れられる距離まで近付いて いた。 そこで騎士の動きが変わる。 また一歩下がるかと思われた騎 士の片足は腰を引くのに使われ  息もつかずに勝負がついた。  「お前、兄弟はいるか?」  目にも止まらぬ速さで放たれ た騎士の一撃を腹で受け止めた 見習い兵士は、地に両膝を付い て騎士の言葉を聞いた。
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