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蝉のけたたましい鳴き声が鼓膜を刺激する。
先程まで人が頻繁に出入りしていたせいか少し埃っぽい部屋。カーペットも何も敷かれてない床に座り一人深く息を吐いた。
殺風景な部屋の中、高く詰まれたダンボールの数々を眺める。もう一つ深く息を吐くと「よしっ!」と気合いを入れ、首に掛けたタオルの両端を掴んで立ち上がった。
まずは、生活に最低限必要な物から揃えていくことにする。“雑貨”と書かれた箱のガムテープを外す。目当ての携帯充電器を見つける前にオレンジ色の目覚まし時計が目に入った。
時計の上にベルがついている至ってシンプルな目覚まし時計。これは四年前、高校入りたてのときに新生活に胸を躍らせ買ったものだ。ちょうど二時を指しているそれを手に取り、静かに床に置くと目当ての携帯充電器を再び探しだす。
それから、寝具や洗面用品等をあるべき場所に配置していく。一通りの作業が終わるとベランダから西日が射していた。
ベランダに歩み寄りガラスに手をかけると湿り気と熱気を帯びた風が身体を包んだ。
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