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出前も考えたが、飲み物もないし、ついでに散策しようと近所のスーパーに行くことにした。財布と携帯電話と鍵を持ち部屋を出る。
エレベーターを降りたところで、エントランスホールにある掲示板に顔を向けた初老の女性が目に入った。物腰柔らかくいつも優しい笑顔を浮かべている大家さんの村上さんだ。
ちょうど良かった。近くにあることは知っているが、行き方が分からないスーパーの場所を尋ねようと声をかける。
「こんにちは。」
“こんばんは”の方が正しかったのか一瞬考える。
村上さんは私に気付くと柔らかい笑顔を見せてくれた。
「あら、相田さん。こんにちは。丁度あなたのところに行こうと思ってたのよ。引っ越しは順調?」
「なかなか一人だと片付かなくって……今からスーパーに夕食のお惣菜でも買いに行こうかと思ってたんですよ」
少し肩をすくめる動作をする。
「あらあら……大変ね。何か手伝えることがあったら遠慮なく言ってちょうだいね。スーパーの場所分かる? 私もスーパーの方に行くから良かったら、一緒に行きましょうか」
私は村上さんのありがたい申し出に甘えることにした。
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