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意外な人の名前が出たようで、意外でもない気がする。伊藤君とはそんな人だ。キキョウちゃんの彼氏で、私とも友達。私達は、中学時代に出会った。当時から、掴み所の無い人で、何でキキョウちゃんと付き合っているのかもわからない。キキョウちゃん曰く、「謎な部分に惹かれた」らしいが良くわからない。でも、変な体質の私とも仲良くしてくれる良い人だということはわかっている。
そんな人が、この部活に一枚噛んでるらしい。
「キキョウちゃん。伊藤君が部活を作った方がいいって言ったの?」
「ええ、そうよ。私が香澄の為に何かやりたいと相談したら、あの男は部活を作ろうと言ったのよ。私も名案だと思ったわ。
それから、私が部活の大本を作るから、伊藤君は部員と顧問を探すように言ったのよ。だから今は、伊藤君は部員を探しているところね」
この計画は、本当に電撃的に進められているということが良くわかった。そして、真の黒幕は伊藤君だということも。彼は、キキョウちゃんの行動力を理解した上で計画しているのだろう。
「えっと、それじゃあ、まだ部員は集まって無いのかな?」
「そうね。まだ連絡がないことを考えると、見つけ終わっていない様ね」「見つけ終わっていない? 確保し終わってないじゃなくて?」
「そうよ。だって、部員の獲得が部長の最初の仕事だもの。伊藤君は前座にすぎないわ。だから、連絡があるまでは教室で待機していましょう」
まさかの展開だった。
「ちょっと待った。そんなの聞いてないよ!」
「当り前よ。言ってないもの。だって言ったら、嫌がるでしょう?
だから、事後承諾なのよ。それに、この部活は高校生活を充実させることが目的なのよ。この程度でビクついて、明日が迎えられるものですか。香澄、腹括りなさい」
「そんなこと言われても…」
「大丈夫よ。伊藤君も無難そうな人を選んでくれるわよ」
「そうかなぁ」
「そうよ」
なんて遣り取りをしている内に教室まで辿り着いていた。クラスの皆は部活に行ったり、下校したようで誰も居なかった。
誰も居ない教室で私達は、他愛のないお喋りをしたり、キキョウちゃんの持ってきたお菓子を食べながら、伊藤君からの連絡を待っていた。私は、連絡が来ないまま下校時刻になってくれないかなぁと思っていたのだけど。これはキキョウちゃんには内緒だ。
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