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―帰り道にて―
必要書類を提出した後、私達は帰路についた。蜂須先輩は帰る方向が逆だったので、校門で別れた。書類を出しに行く時からさよならを言うまで、ずっと私の方を見ていたような気がしていたので、二人に聞いてみた。
「二人に聞きたいんことがあるんだけどいいかな?」
「いいわよ」「何かな?」
「ありがとう。ええとね……私の思い込みだったら恥ずかしいんだけどね……蜂須先輩って、私のことをずっと見ていたみたいなんだけど、どうしてかな?」
と、私が聞くとキキョウちゃんは、あぁそのことか。という感じでため息を吐いていた。伊藤君の方は何か知っているという顔で爽やかに微笑んでいた。
「香澄、私も蜂須先輩の視線には気付いていたわ。けど、何であんなに熱烈に貴女の方を見ていたかは知らないわ。まぁ、そっちの男は何か知っているようだけどね?」
そう言って、キキョウちゃんは伊藤君を指した。
「知っているの? 伊藤君は」
「まぁ、知っているかと聞かれたら、答えない訳にはいかないね。
では簡単に答えよう。トカゲさん、今日の僕が何をしていたか知っているよね?」
「うん。今日は部員を探していたんだよね」
「その通りだよ、トカゲさん。そうして僕は一日中スカウトをしていたんだ。でも、当たりはなかなか出なかったんだ。そこで僕は考えた。入部するに当たって何か特典を付ければいいとね。で、蜂須先輩はその特典のおかげで、入部して下すったんだよ」
ここまで言われれば、鈍い私でも気付いた。
「その特典っていうのが、私と何か関係しているのね?」
「そうだよ。ご明察の通り、僕はトカゲさんを特典にした。厳密に言うと、部長を好きにしていいという条件だったかな。彼女は快く了承してくれたよ」
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