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――「アセンションを遂げた世界は、常に光の力(フォトンエネルギー)に満たされている。
人類を含む生命は、そのフォトンエネルギーを体内に取り入れたことにより、これまで眠っていたとされる力を呼び覚ますこととなる。
これが俗に言う「生命アセンション」である。
そして、アセンションを遂げた人類は、大きく分けて二つの種に進化を遂げ繁栄していった。
それが先ほど述べた〈バイオレット〉と〈クリスタル〉である。
ではこれから、二種の大まかな共通点、相違点を述べていこうと思う…」
――とその時、後ろの扉を小さく二三叩き、長いブラウンの髪をした女性がやって来た。
「レリクさん」とザックは直ぐに呼び、その頭を深く下げた。
女性―レリクも一礼し、シェイン達を見やる。
母親なのだろう… 勉強をしている事を喜び、二人を労う様子は、それを無言で物語っていた。
シェイン達は気を利かせたのか、自分達の部屋で勉強してくると言い、足早に部屋を出て行った。
二人のみとなった部屋には、変わりに妙な静寂が居座った。
それが長居する前に、レリクはザックに話し掛けた。
「子供達に付き合って頂き、ありがとうございます。おかげであんなに勉強嫌いだった子達が自分から勉強を…」
――自分から学ぼうとする。
その心が美徳とされるこの世界は、自ら学びたいと思わないかぎり他人は強要してはならない。励みたいと思った時、それが大人への大一歩。
「俺は助けて貰った恩を返しただけですよ。」
ザックは申し訳なさそうに言った。
「あの日…」
・・・
ザックの脳裏に、「あの日」のことが浮かびあがった――
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