■第一話「アップ・ザ・ロード」

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「まったく、言い訳も出来ない愚行でした…まぁおかげで雪の写真が撮れましたけどね。」 言って、ザックは苦笑した。 ふと、視線をレリクから横にある窓へと向ける。今なお降り続く雪が、静寂の中を跋扈(ばっこ)していた。 「さっき気象予知の人に聞いてみたんですが、雪はまだまだ降るそうです。でも夜はそろそろ明けるみたいですよ。」 レリクの話を聞き、ザックの頭に何かがひらめく。 夜が明ければ危険は減少する。数時間程度であれば、積もった雪も溶けることは無い。 画策することはただ一つ。 夜明け直後の安全な時に、山の雪景色を収める… 写真家故の好奇心だった。 カメラのレンズが鋭く輝く。 一言礼をいい、身支度を始めるザックの瞳も、カメラに負けじと輝いていた―― ――――――――― ――丸一日近く続いた夜が開け、鳥達が朝を唄い出す。 外に出て、まず始めにすることは深呼吸。 自然の空気を大きく吸い込みながら、周りの景色を見渡した。 見事な銀世界は、雪の冷たさを忘れさせるほど美しかった。 白を踏むと、土の茶となり、足跡になる。 ザックは、それを無数に作り進んでいった。 あまり遠くには行けない。 目標を、近くの森にし、いざ行かん。 だがその前に… 「子供はついて来ちゃ危ないぞ。」 ザックの一声に驚いて、後方の木の陰から恐る恐るシェイン達が現れた。 「…雪道くらい平気だよ。僕たち"クリスタル"だし。」 カインは得意げに話した。 さしずめ、身支度をしている間に勉強の続きをしたのだろう。 「ザックもクリスタルでしょ?」 言いながら、ザックの首にぶら下がったカメラを覗き込む。 「イチガンレフカメラってやつだよね!」 よほど珍しいのだろう。カメラを見る目はレンズ以上に輝いている。 その光る瞳を見ながら、ザックは頭を悩ませた。 「クリスタル」とはいえ、二人はまだ子供。連れて行くのが不安だった。 ――クリスタルは、アセンションによって肉体を飛躍的に進化させた人類である。 そのため、その身体は疲れを知らない。 だが、それでもやはり子供は心配だった。 「もう夜は来ないから大丈夫」と、二人は仕切りに訴える。 ザックはついに説き伏せられ、渋々ながら二人を連れて行くことにした。 そしていよいよ、森の中へと足を踏み入れる――
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