■第一話「アップ・ザ・ロード」

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――数時間後。 森の中には、辺りを見回し先頭を切るザックと、後ろを黙々と歩くシェイン達が居た。 二人の口を塞いでいたものは、シェインの手に握られた一冊の本。 カインは横からそれを覗き込み、兄に負けじと目を細め、書いてある文章を読んでいた。 ――――――――― 「項目『クリスタル』 アセンションを達成した新人類の一種。 人類の半数以上はこのクリスタルに分類される。 肉体の進化に伴い、 ・病気という恐怖からの解放。 ・疲労というしがらみからの解放。 ・再生能力の向上。 ・寿命が拡大。それに伴い、魂の寿命を取得。 「魂の寿命」それは肉体が尽き果て、失われても、魂があるかぎりその命は繰り返される、というものである。 言うなれば、我々人類にとって肉体の寿命より、魂の寿命こそが大切であると言えるだろう。 魂そのものはとても脆弱な存在。 むき出しの状態では簡単に消滅してしまう。 肉体とは、そんな脆弱な魂を守る鎧だと思えば解りやすいだろう。 肉体が傷つき、その機能を停止させた場合、魂は自身を守る入れ物がない状態になる。 その状態はとても不安定なため、僅かな動揺でも魂の寿命を縮めてしまう。 そこで魂は、周囲の物質に宿ることで仮の入れ物を手にし、肉体が再生されるまで待つのである。やがて完全に再生された時、魂は再び元の肉体に宿り、生を取り戻す。 これが、クリスタルの輪廻のサイクルである―――
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