266人が本棚に入れています
本棚に追加
――数時間後。
森の中には、辺りを見回し先頭を切るザックと、後ろを黙々と歩くシェイン達が居た。
二人の口を塞いでいたものは、シェインの手に握られた一冊の本。
カインは横からそれを覗き込み、兄に負けじと目を細め、書いてある文章を読んでいた。
―――――――――
「項目『クリスタル』
アセンションを達成した新人類の一種。
人類の半数以上はこのクリスタルに分類される。
肉体の進化に伴い、
・病気という恐怖からの解放。
・疲労というしがらみからの解放。
・再生能力の向上。
・寿命が拡大。それに伴い、魂の寿命を取得。
「魂の寿命」それは肉体が尽き果て、失われても、魂があるかぎりその命は繰り返される、というものである。
言うなれば、我々人類にとって肉体の寿命より、魂の寿命こそが大切であると言えるだろう。
魂そのものはとても脆弱な存在。
むき出しの状態では簡単に消滅してしまう。
肉体とは、そんな脆弱な魂を守る鎧だと思えば解りやすいだろう。
肉体が傷つき、その機能を停止させた場合、魂は自身を守る入れ物がない状態になる。
その状態はとても不安定なため、僅かな動揺でも魂の寿命を縮めてしまう。
そこで魂は、周囲の物質に宿ることで仮の入れ物を手にし、肉体が再生されるまで待つのである。やがて完全に再生された時、魂は再び元の肉体に宿り、生を取り戻す。
これが、クリスタルの輪廻のサイクルである―――
最初のコメントを投稿しよう!