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「俺とお前、いつから一緒だったっけ?かれこれもう十年近く一緒だよな?」
「確か、十年と十一ヶ月と二十日だ」
その桁外れな記憶力も、出会った当初は驚いたものの、今となっては驚けない。それだけ慣れてきていたのだ。
慣れてくるにつれて、最初こそ注目していたのにどんどん見向きもしなくなっていく。
彼はそんなつもりではなかったが、彼女にとっては彼に注目されていることこそが普通の状態だった。
それが日を追うにつれてあまり注目されなくなった時から、自分から離れていったものとして感じてしまった。
一人は寂しい。だからどんなことをしてでも彼に自分を見て欲しかった。
十年も連れ添った彼だから、恐らくこのような思考なのではないか、と推測できた。しかもほぼ当たっている。
しかし、一つだけその推測に誤りがあった。
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