誕生

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誕生

 ここは海の底にある、人魚の国の物語。  その日国王様は朝起きてから、仕事をしようと執務室に入ったが、落ち着かず、椅子に腰掛けたり、そうかと思えば、部屋の中をせわしなく動き回るという事を、幾度となく繰り返していた。  それと言うのも、早朝王妃様が産気ずいたと報告を受けたためである。  その様は一国の王たる威厳も、欠片もない狼狽ぶりであった。  そして傍らに控えている歳を重ねた執事に、何回目かの同じ質問を繰り返す。 「まだ、生まれんのか」
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