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「黒いお子が、誕生されました」
「黒い…」
そう呟いたかと思うと勢いよく執務室を飛び出し、驚くほどの早さで王妃様の部屋の前まで来ると、声をかけず乱暴に扉を押し開き愛しき妻に声をかける。
「ルシア」
「フィスタル様」
王様に声をかけられ、満面の笑みで答えるお妃様の腕の中に、先程誕生したお子が抱かれ、愛らしい容姿ですやすやと寝息をたてて眠っていた。
それを見つけた、王様は無言で王妃様に近寄って、腕の中から黒いお子を引ったくるように奪い取ると、これまた大きな声である人物の名前を叫ぶのでした。
「セア、セアはいないのか!」
その声に答えるように、一人の年老いた人魚が部屋の入り口に現れ、中の様子を窺いゆっくりと部屋の中に入り、いまだ名前を呼び続ける王様に静かに声をかけます。
「何をそんなに騒いでおいでか、一国の主たるものが!!
そしてそんなに、大きな声を出さなくても、200歳は越えましたが私はまだ耳は遠くなっておりませんぞ」
「おぉ、セアか良く来た。
貴方にたのみがある。
今しがた黒い子が生まれたのだ。
しかしこの子は誰の目にも触れぬよう、北の塔に幽閉しセアに生涯面倒を見てもらいたいのだが、いかがだろうか?」
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