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昔、迷い込んだ森の中で今までに見たことのないほど綺麗なモノを見つけた。
空が朱に染まり、枝の間から零れ落ちてくる光は全てオレンジ色だった。
緑色の森の中、どこに来てしまったのかもわからず、ただひたすら歩いていた。
ふと、空を見上げると、一筋のオレンジ色が差し込むところがあった。
慌てて駆けていくと、そこには俺と同じ年頃の小さな少年がいた。
少年は空色の瞳を大きく丸くして、俺を見た。
俺も同じく、その空色を見た。
「なにしてるの?」
聞かれて、答えようと思ったのに声が出なかった。
何も答えない俺に、少年は視線を外すと立ち上がって背中を向けた。
少年が一歩足を踏み出したとき、自然と身体が動いていた。
「まって!」
少年の細い腕を掴むと、思ったよりも大きな声で言っていた。
「まって・・・・・・」
もう一度、今度は小さく言う。
少年の蒼い瞳を見ながら、尋ねていた。
「きみは、だれ・・・・・・?」
少年は答えてくれなかった。
少年を捕まえている手を取ると、少年は俺が来た方とは逆の方向に俺の手を向けた。
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