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とさっ 闇の中、膝から崩れるように人が倒れていく。 どさっ 次々に聞こえてくるその音の間を、赤い線が走り抜けていく。鮮血が飛び散っていく中、うめき声は残らない。ぴたりと冷たい風が止むと、木々の開けた場所に人影が見える。月の光で銀色の刃がきらめくと、勢いよく刃を振る。赤いしずくが刃から落ちて緑色の葉を赤く染めた。 息を小さく吐いて、狐の面を被った銀髪の青年は月を見上げる。面の下で目を細めると、背中に背負った鞘に刃を収めた。 「帰るぞ」 青年が小さく言うと、音もなく傍に来ていた漆黒が素早く印を結び血だまりになっていたそこに青い火をつける。炎は一帯を包み込むと、倒れた屍だけを燃やしていく。後には灰も残らず、森の静寂が戻ってくる。 土を蹴って銀髪の青年は枝と枝の間を飛んでいく。その後を漆黒が黙ってついて行く。 「焔」 里が近づくと、漆黒が銀髪の青年を呼んだ。焔と呼ばれた銀髪の青年は、無言で足を止めると振り返って漆黒を見つめる。 「先に帰ってろ。報告は俺がいく」 面の下で、きりっとした表情が一瞬だけ緩む。 こくりと小さく頷くと、瞬きをしている間に焔は消えていた。
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