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そして、三日前。
遂に僕に死刑と言う判決が下った。
検察官の話では、僕は道行く人々を合計で二十三人殺したんだそうだ。
僕は法廷で何度となく、記憶がないと証言しても認められず、死刑判決が下ったのだった。
「御鶴木隼人、時間だ」
不意に僕の回想が打ち切られ、コンクリートの囲いから連れ出された。
「ねぇ、首吊りって痛いの?」
警察官に聞いてみたが、男は黙りで、僕の方を向こうともしない。
その十分後、僕の首には妙にざらつくロープがしっかりとかけられていた。
「被告人御鶴木、何か言い残したことはあるか?」
ガラス張りの向こうに、関係者が六人ほどいて、ほとんどの人達が僕の方を見もせず、談笑しているのが見てとれる。
大方、世界陸上の話しでもしているのだろう。
こんなことを考えるほど、僕の心には余裕があった。
「…死刑執行」
その声と共に、足元で僕の重力を支えていたものがなくなり、僕は宙ぶらりんになる。
自分で首の骨が折れたのが解った。
うすれゆく意識の中、視界のはしに、僕を見て笑っている奴等が写った。
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