『キーワードなし』

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「じゃあさ、ミスド寄っていこうよ」  幽霊は飯食えないだろう。と言うか、ミスドって全国共通語なのか?  余談になるが、マクドナルドがマクドなのは、大阪だけだそうだけど、ミスタードーナツはミスドで良いんだろうか? ミッスとかどうだろう。 中々のネーミングセンスの無さだと思うんだが。 「おーい、タッちゃん。聞いてる?」 「いや、聞いてなかった」 「ひどーい!タッちゃんのバカ、バーカ」  彼女と知り合って一ヶ月。 未だに俺の名前を、達也だと勘違いしているらしい。 「ごめんごめん。ミスドな。行くぞ」  俺の後ろを、音もなく、スーッと付いてくる。  一ヶ月前、地方大会決勝戦。 俺は、エースナンバーを背負ってマウンドに立っていた。  わずかに他よりも高く、グラウンドにおいて限られた者しか立つことを許されない場所。  キャッチャーから、十八・四四メートルの距離を越えてサインが出される。  九回裏、ホームランによって二点は取られたが、この試合、なんとか俺はここまで投げ抜いていた。  ツーアウトランナーは一塁。 一点リードの手に汗握る展開である。
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