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グッと気を引き締めて、セットポジションに入る。
心地良い風と共に、ナインからの声が俺の背中を押す。
しかし、キャッチャーからのサインに俺は愕然とした!
何と、敬遠のサインが出たではないか。
慌ててセットを崩し、ベンチに目をやる。
監督は俺を見て、大きく縦に首を二回振る。
確かに、このバッターは俺からツーランを放っている、四番バッターではある。
しかし、俺には絶対的な自信があった。
そう。フォークボールだ。
もう一度プレートに足をかけ、俺はキャッチャーに向かって首をふってみせた。
慌ててキャッチャーは座り直し、サインを出す。
監督がベンチから大きな声で怒鳴っているが、そんな事は関係ない。
コースに決まったストレートに、ピクリとも反応しない相手バッター。
三球目、キャッチャーからストレートのサインが出た。
再び、首を振る俺。
三年間培ってきた思いを、想いを、指先に込めて投じたフォークボール。
低めに決まった。
しかしまってましたと、快音残して俺の横を抜けていくボール。
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