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ドガアァァ────ァン……
5分前までは立派な研究施設だったであろう場所が、数分にして廃墟と化した。
「ちょっとやりすぎちゃったかしらぁ~?」
そこに、深々とフードを被った黒ローブの“女”が、埃1つ付けずに長さ2mほどの扇をもって立っていた。
「まぁ、関係ないわねぇ~」
そう、彼女が言った刹那。
ビュゥゥゥゥ―――
「ったく、遊びすぎなんだよ<扇姫>は…」
一陣の風が吹き抜けた…かと思うと、後には女が一瞬にして“少年”に変わったかのように立っていた。
「ちょ<扇姫>聞いてる? ねぇ無視?」
人っ子一人いないのに話掛けているその少年は、イタイ事に頭の病気──
『聞いてるわよ~ それに<扇姫>って呼ばないでよ~ 昔を思い出すじゃなぁい?』
──ではなく、返答は少年の頭の中に返ってきた。
「いやいやいや、昔<扇鬼>と呼ばれたSSSランク犯罪者だった時のように、たった今まで暴れてたのはどこの誰だよ?」
はぁ…と軽く溜め息を吐き、少年は廃墟の中へと歩を進める。
『うっ!? それはぁ~、で、でも~ 私が犯罪者扱いされてた時にぃ~〝俺と自由に生きよう?〟ってプロポーズしてくれたのダーリンでしょ~? だから自由に暴れたのよ、文句言わな~い』
「あぁ…10歳の時だっけ? しかもプロポーズじゃねーし」
『えぇっ あの愛は嘘だったのぉ!?』
声だけになるのだが、彼女はヨヨヨ~と嘘泣きを始めてしまった。
「もういいよ…。
あ…そういやさ、ここのSSランク犯罪組織の研究員の2人も俺達と同じで《特殊》属性を持ってるらしいよ?」
少年は頭に響く声と話を交えながらも、着々と奥へと進んでいた。
『へぇ~、得したんじゃな~い? …でも私の為に《魂》使わせちゃってゴメンね~?』
何か事情があるようで、彼女は本当に申し訳なさそうに謝る。
「ん? 何を今更、俺とお前の仲だろ?」
『ありがとぉ…。
と、ゆーことで、いいかげん名前で呼んでよ~』
「ダメだって、今は任務中だからケジメだぜ? ケ、ジ、メ。
<扇鬼>から<扇姫>に変えて呼べって言ったの誰だよ……。
──っとここが一番奥だな… いくぜ<扇姫>?」
一番奥と思われる扉を見付けると、穏やかだった目付きを捕食者のソレに変え――開け放った。
「こんちゃーす、犯罪者サンいる?」
目付きの割には中々の脳天気さを見せ付けた少年。
それは余裕の顕れか──
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