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「あぁ、それで…」
「うん…じゃなくてっ、聞きたいのは、なんで虐待されてたのにそんなに心配するの? 報復とかならわかるけど、なんで?」
確かにサキの言っていることは決して良い事とは言えないが、やられたらやり返す、世の道理である。
「なんで──か。んー、そりゃあ愚問だぜサキさん」
「どーゆーこと? 虐待されてたんでしょ? 今はしーちゃんも反省してるみたいだけど……」
「はは、そりゃあ兄妹だからだよ、妹を心配して守るのが兄の努めってモンだろ? ……ねぇセリナさん?」
「えぇ、私はギルドマスターだけど、その前に、いち姉としてサキの事心配してるのよ? そういうのが兄弟姉妹ってものよ」
「あぁ……、つまり兄妹愛?」
「ん? 違う気もするけど、そんなモンかな?
──っと話がずれたな、セリナさん、任務の方は?」
「えぇ、話を戻しましょうか、最近魔物が活発か───」
「ストップ、魔物は俺の管轄外だ」
「話は最後まで聞きなさい」
話を途中で遮られ、白い目をクロアに向けるセリナ。少々機嫌を悪くしたようだ。
「最近、魔物が活発化してきているの、これだけでも異変なのに……加えて群れを成している魔物がいるのよ。
例えば、ドラゴンとか……」
クロアは目を見開く。
「えっ! ちょっ! あの稀少で個体数の少ないドラゴンが!?」
「えぇ、説明どうも。それだけじゃなくて、そんな魔物達に手術跡があったの、調べて見れば違う魔物の細胞が埋められてたりしたの……」
「合成獣<キメラ>か……って、ことは、人間が後ろで糸を引いてると?」
「そうなの、そこで今、変に行動を起こされて将来国を担う子たちを失うわけにはいかないわ」
そこまできて何かに気づいたクロアが、納得したように頷いた。
「あぁ……、そういうことですか、そうですか、サキだけじゃ“人間”を相手にして対応しきれないから俺に学園の援護にあたれ、と」
「察しが良くて助かるわ、名目は警戒だからFランクの依頼よ」
「やられましたね、裏ギルドに頼めばゴッソリ金持ってかれますし…ね。わかりました、相手で人間が現れたら教えて下さい、直ぐに向かいます」
一応話はまとまった。だがしかし、当のセリナはポカンとした顔をしている。
「何言ってるの? 貴方には学園に通ってもらいますよ」
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