・鍵

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俺は皆と一緒に部屋をでると食堂の反対方向へ向かった。 勿論行き先は咲真の部屋だ…周りから見たら結城に掘れたくせにって思われるかもしれないけど…それとこれとは別。 俺は咲真の部屋の前で大きく深呼吸した。 「よし…」 決心してドアノブを握るといつもより冷たい気がした。 「失礼します」 一歩踏み出してから気付いた。咲真の部屋に入ったはずなのに目の前は空き家だった。 …咲真? 「…」 どうして…?確かに咲真の部屋に入ったのに…あ、そうか…きっと咲真の部屋とここが繋がっちゃってるんだ…じゃあここを出ればきっと。 そう思いドアノブに触れるとまた、氷のような冷たさが指に触れた。 もう一度ドアを開くと…目の前は廊下だ。 「あれ?」 繋がってない…。振り返って扉を見てみる、すると咲真の部屋の扉ではなかった。 「…」 俺…ボケてるのかな…きっと入る扉を見間違えちゃったんだ。 掌を見てみると氷のような冷たさに触れたせいか真っ赤に腫れていた。 俺はもう一度咲真の部屋に戻るべく、歩き始めた。 「あ、穂高」 「あれ?ひかる…どうしてここにいるの?食堂行かないの?」 「穂高こそ…」 「ああ…そうだね…あえて理由を言うであれば…調べごと」 そういって唇の前に人差し指を立てると足早に去っていった。調べごと? …こんな時間に?誰もいない時。 咲真の部屋へ向かおうと方向転換した時、肩になにか冷たいものがふわりと乗った。 「!!!???」 俺は言葉にならない叫びをあげた。しかしそれはよく見ると人間の手であった。 恐る恐る振り向いてみると白い顔をした咲真が立っていた。 「咲真?」 「あ?…ああ、ひかる…何故こんなところに」 「咲真こそ…」 咲真はキョロキョロと周りを見渡すと何故だろうな…と言い首を傾げた。 「もう…飯は食ったのか?」 「いや、まだ…」 「じゃあ一緒に食おうぜ」 そういって咲真の手を引いてみた、さっきと違って暖かい、氷が溶けてぬるま湯になったみたいだ。 「皆と食べればよいものを…何故わざわざ来た?」 「…」 俺はちょっとカチンと来たから、無視してやろうとしたけど…悪気はないみたいだったから答えてやろう。 「一人だと淋しいんじゃないかと思って…来たんだよ」
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