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結局…あの男は誰だったのだろう…自称貴方の幻想…俺の作った幻だと言っていた。
でも俺は別に兎が欲しかったわけでもそういう生きものがいちゃいけないなんて思ってない。
どうしてあんな姿に…
「ひーかる?」
「わっ…佐野…」
急に佐野がのしかかって来たからついよろよろとした。
「どうしたのー?むつかしい顔してさぁ…」
「難しいって…」
俺は顔に出るタイプなのだろうか…そうなんだろうか!!!
ちょっとショックだ。
まてよ…ここにいる佐野は本物なんだろうか…俺の前にいるいつもと同じお間抜けな佐野をじっと見つめても答えは出ない。
「オマエは…佐野?」
「?、うん!!」
光り輝く100万ドルの笑顔を振りまきながら佐野は答えた、これは佐野だ…絶対佐野だ。
「よかった…」
「んー?よくわかんないけどひかるがいいならいいかなぁ~」
そういって俺の前でくるくると回った。コイツは気楽そうでいいな、なんて思っているとあれを思い出してしまった。
あの文のあと…
化け物と呼ばれ…親から愛されず生かされてきた。
―生かされてきた―
その言葉が気持ち悪くて…しかたなかった。どうして生かされてきたと書かれていたのか…生きてきたではいけなかったの?
「あのな佐野…」
「んー?」
「この前咲真の部屋で…佐野の資料見ちゃったんだ」
佐野は急に動きを止め…上げていた両腕をがくんと下げた。
沈黙の中…あーあと吐き捨てると俺の方にくるりと身体を向けた。
「見ちゃったんだ…あれ」
「…うん、ごめん」
佐野はカリカリと頬を掻くと少し困った顔をしたが意地悪い笑顔を見せると俺の顎を鷲掴んだ。
「酷いでしょ?あれ…びっくりしたよ…初めてここに来たとき見付けちゃって…読んでみれば俺のこと調べ済み…酷い事沢山書いてあったよ…でもその通りで…何も言えなかったんだ」
徐々に佐野の表情が曇っていくのがわかった。辛い…本当は話したくない…知らないで!!
そんな気持ちがあふれ出てる。
「もういいよ!!」
俺は力一杯佐野を抱き締めた。どうして…こんなにお気楽な佐野が苦しまなきゃいけない?どうして子供の中に愛されず育つ子供がいる?
なら生まなければいいのに!!
「もーいいよ、辛い思いなんてしなくていいんだ…結城」
俺、どうかしてる…愛されたくて強がる結城が…愛しいなんて…こんなにも…本能を擽る。
「今…結城って」
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