その一 荒川正也の場合

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センターこと、神姫センターは駅ビルの三階にあった。 一つの階を丸々使ったその施設はゲーセンとは思えない造りになっている。 十分な広さを持ったロビーにはところどころに観葉樹が並び、備え付けのイスに人が思い思いに座り、自分の人形、神姫や知り合いたちとコミュニケーションをとっている。 上のほうに備え付けてある液晶ビジョンには神姫の新商品のCMはもちろんのことながら、スポンサーであろうメーカーのCMも流れていた。 正也は前の人の用件が終わったのを確認するや否やカウンターへと向かった。 「ようこそ、神姫センターへ。オーナー登録証をお願いします」 にっこりと微笑む受付嬢に正也は用件を切り出した。 「えっと、この子のオーナーを調べたいのだけれども」 正也はそう言ってエオエルを置いた。 「忘れ物ですね。少々お時間いただきますがよろしいでしょうか?」 えぇ、と正也は短く応える。 「わかりました」 受付嬢はそう言うとエオエルを優しく手にした。そして、 「こちらへ記入をお願いします」 と、言って一枚の紙を差し出す。 その後受付嬢はバックヤードへと消えていった。その間に正也は差し出された紙に必要事項を記入する。 「何々。僕の名前に、拾った神姫の名称。どこで、いつ拾ったのか、と……」 正也が紙に記入し終えるのと同時に受付上がバックヤードから出てくる。 「ご記入、ありがとうございます。検査の結果までしばらく時間がかかりますので、イスにお座りになってお待ちください」 そう言われて正也はカウンターを後にした。
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