その一 荒川正也の場合

13/150
前へ
/333ページ
次へ
小走りに正也はカウンターへと向かう。 「荒川様。今回の天使型MMSですが、登録情報が抹消されています」 「どういうことだ?」 顔をしかめる正也に向かって、 「マスターはすでにいない、ということです。通常ならこんなことはありえないのですが……いかがしますか?」 受付嬢は言ったものの、その表情からは困った様子がありありと出ていた。 神姫のリセットや破棄の場合、コア.セットアップ・チップ(CSC)と呼ばれる神姫の心臓部分を取り除かなくてはならない。 その後、ボディとCSCの照会をセンターでしてもらい、その過程が完了するとのことだった。 よって、今回のようなケースは稀なのだ。 「このことをエオエルには?」 正也の質問に受付嬢は小さく首を横に振る。 「それじゃ、少し話し合う時間をくれませんか?」 正也の言葉が意外だったのだろう、受付嬢は目を見開いた。 「かまいませんが……よろしいのですか?」 「よろしいも何も、僕がそう言っているのだからそれでいいんだ」 やれやれと言いたげな態度で受付嬢は立ち上がる。 「わかりました。少々お待ちください」
/333ページ

最初のコメントを投稿しよう!

240人が本棚に入れています
本棚に追加