その一 荒川正也の場合

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ピピピ……。 布団の山が動いた。 ピピピ……。 山からニュっと現れた腕はメトロノームのように揺れる。 ピ。 腕は携帯電話に触れるとそれをしっかり掴む。携帯電話は音を封じられてもなお、体を震わせて手の中から逃れようとする。 ガバっ! 布団の山が跳ねた。そこから現れた男は携帯電話のディスプレイを開く。ディスプレイには『7:30am』と印されていた。男の表情が一気に青ざめる。 ヤバイ! 男は急いでクローゼットに向かい、スーツ一式を取り出した。
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