その一 荒川正也の場合

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正也は備え付けのインカムをつけると、正面を見た。 そこには相手が座っている。黒い武装を身に纏った神姫が憎らしく口を開いた。 「そんな装備でボクに勝てると思っているの? 悪いオーナーに当たったねぇ」 なんなんだと思いながら、正也は、 「大丈夫なのか?」 エオエルに話しかける。 「はい。スタートボタンを押す前に」 エオエルがイスの脇を指差す。そこにはディスプレイがあり、相手の情報が表示されていた。 「これはしっかり覚えておいてください。マスターを探す重要な手がかりですから」 「あ、あぁ」 正也はエオエルに半ば押される形でディスプレイに眼を通した。 ディスプレイに表示されているのは、オーナーとその神姫の名前。そして神姫の装備とその勝率だった。 「勝率、八割……」 試合回数から考えるに相当な腕前のようだ。 ふと気がつくと、相手の神姫はすでに下へと降りているようだ。 「エオエル」 「えぇ」 正也はその返事を聞いてスターとボタンを押した。 エオエルがゆっくり下へと降りていく。 ディスプレイ上ではゆっくりと立体映像が浮かび上がる。 舞台はどこかの街中のようだ。その街中にエオエルと相手の神姫が配置される。 BATTLE START! 合図とともに戦闘が始まった。
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