その一 荒川正也の場合

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ふと気がつくと、時計は夜中の二時を指している。 (あのまま寝たのか) むっくりと起き上がった正也はガシガシと頭を掻いた。 とりあえずシャワーでも浴びようと考えて、正也は気だるそうに歩き出した。 シャワーを浴び終えた正也は自分の悲惨さにため息が出た。 とりあえず、不燃ゴミは出したとはいえど、空き缶は床に転がり、雑誌が散乱している。燃えるゴミの袋は今にもはちきれんばかりだ。 「はぁ」 正也はため息をつくと手始めに蛇の抜け殻のように投げ捨てられたスーツを手に取った。 「?」 スーツが不自然に重い。正也はポケットの中を探った。 中から出てきたのが、人形だった。朝、駅に着いたときに手にしていたことを思い出し、そのままポケットの中に突っ込んだのだ。 「それにしても、何だっけな」 正也は人形をまじまじと見る。 金髪を模した髪に白を基調とした体。記憶の中の何かが引っかかっている。 しかし、今の正也にとっては部屋の掃除のほうが重要だった。人形のことはとりあえず置いておいて、正也は部屋の掃除を開始した。
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