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壁が壊れたと同時に、ルドルソンの狂気に歪んだ顔がアンジェにググッと近付き、その丸太の様な右脚を振り上げた。
それをアンジェは体半分ズラしてかわし、浮き上がった脚を大きく持ち上げる。
素早くしゃがむ。
そして強烈な水面蹴りをルドルソンの軸足に放つ。
が……
「な!?」
それでも一切揺るがない。
ルドルソンはそのまま目下のアンジェ目掛け踵落とし。何とか避けるアンジェだが、不幸にも道着の裾を踏まれてしまった。
「しまっ……」
狂気だからか、それとも超一流の武道家だからか。その状況になる事を読んでいたかの様に、左足を出す事を躊躇わなかった。
―キュイン―
だが、その足はアンジェに触れなかった。
「アンジェ~大丈夫~?」
シェイラが張った言霊破棄の障壁による。
ルドルソンはそれを破ろうと連続して踏みつけを行う。が、途中でバックステップを踏み、距離を置いてしまった。
裾を踏んでいた足、その靴下の踝(クルブシ)辺りは手の平の形に白く霜が降っており、アンジェの氷を嫌った結果だろう。
下がったルドルソンはその狂気に満ちた頭ながらも……いや、戦いながら徐々にクリアになりつつある頭で、ある違和感を感じた。
(地面が……ぬかるんでる)
その時、灼熱がルドルソンを襲った。
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