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「グルル……」
うめき声に気付き振り返れば、身の丈はかつてウェルフェア祭を襲撃したドルゥマンに勝るとも劣らない3m超。苔むした様な色の短い毛が全身に生えている。
ウサギの様な大きな耳に、ヤギの様な横半月の目。だが、その他の顔立ちはまるで熊だ。
それが、直立二足歩行で立ちはだかっているのだ。
「おーい! お前ら早く逃げろー!」
その後ろから男の声が飛んできた。弓矢と小刀を持っている所から、猟師であると思われる。それが数人、青ざめた形相でこちらを見ている。
「逃げろですって?【半月ウサベー】に対して、人間の脚力で逃げ切れるとお思いですの?」
「あはは~名前可愛いね~」
どことなく棘がある物言いのアンジェに対して、シェイラは身の危険を感じていないと疑う程に朗らかだ。
そんな殺気立っているアンジェを制して前に出たのは、ネクセを背負ったアレンだった。
「シュウ先輩、ネクセを頼みます。アンジェ、同じ相手に2度敗北して怒ってるのは分かる。だが、それは俺も同じだ」
「しかし……」
「バズナルの時は譲っただろ?順番は守れよ」
「アレン、勝てる算段はあるのか?半月ウサベーは魔獣では無いにしろ、その身体能力はかなり高いぞ」
「ありますよシュウ先輩。第一ネクセはヘレシーレオを、メイ先輩はシアロワームを倒してます。俺に倒せない道理は無いですよ」
この一連の会話で分かる事は、アレン達はとても不機嫌であるという事。
はっきり言って、半月ウサベーからしてみれば八つ当たり以外の何物でもない。
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