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「しゃあ来い!!」
腰辺りの高さ、且つ地面と平行に棒を構えたアレンの怒声が丘に響き渡る。
途端、半月ウサベーは脱兎の如く逃げ出した。しかし、その姿はすぐに消える。逃げた先に落とし穴が仕掛けてあったのだ。
それを待っていたかの様に猟師達が穴に近寄りそこに弓を放つ。悲鳴の様な鳴き声が響き途絶えると、猟師達の半分は腰に紐を巻き穴の中へと入っていった。
「……まあ、半月ウサベーは臆病だしね」
シュウの言葉も届かない程、ただただ呆気にとられているアレンとアンジェ。
あちゃーと顔をしかめるメイ。
何が起きたかよく分かっていないシェイラ。
「いやぁー君達のお陰で久々の大物だよ。是非私達の町へ寄ってください」
そんなアレン達に猟師の1人が寄ってきた。
明るいトーンで話し掛けてくるその人に、誰も上手く返事が出来ない中、シュウだけがきちんと己を見失わずにいれた。
「是非立ち寄らせて頂きます。所で、その町には医者はいますか? 急患なんです」
険しい顔で言い寄るシュウに何かを感じ取ったのか、猟師は背負われているネクセを一瞥し……
「付いて来てくれ。少し険しい道を通るが、下るのに10分も掛からないさ。少年は私が背負おう」
と言って山を折り始めた。
一同が早足で猟師に付いて行こうとした時、「ちょっと待って~」とシェイラが制する。
「どうしましたのシェイラ。今は急がなくてはなりませんのに」
屈みながら懸命に地面を見るシェイラを、急かす様に早口のアンジェ。
「忘れ物~。…………あった~」
シェイラが手に取ったのは、一部が膨らんでいる茶封筒だった。
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