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時折、元の世界のことを思い出して泣いた。由紀たちに見つからないところで声を殺して泣いた。由紀たちの優しさが暖かく、申し訳ないという気持ちでいっぱいだった。
「お由紀さん、これどうすればいいですか？」
古くなって皹が入った椀を片手に由紀の下へ行くと由紀はお客の相手をしているようだった。
恵瑠はあまりお客の前に出るなと言われていたので、しまったという顔をしてガタイのいい男に軽く会釈をして厨房に引き返そうとしたが、思いもよらず男は恵瑠を引き止めた。
「おい、お前が噂の異人の遊女か？」
おもしろそうに恵瑠を見る男、由紀は少し緊張したように恵瑠を見た。不思議と、恵瑠は無心だった。
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