密やかな恋

11/12
前へ
/105ページ
次へ
私を窺うように見る伶に、思わず苦笑した。 まるで怒られるのを怖がる子供みたいだ。 伶は私に甘い(ただし私の意思は結構無視する)けど、私も伶に甘い。 それは今更、変えられるようなことじゃないんだけど。 ふっと時計に目を向けて、また伶に視線を戻す。 「伶、そろそろ時間でしょう。行かなくていいの?」 「…りっか、は?」 尋ねられて、珍しいこともあるものだと不思議に思う。 私の放課後の行動なんて、聞くまでもなくわかってると思ってたんだけど。 「いつも通り、図書館に行くつもりだけど……」 そう言うと、伶はちょっと目を細めた。 …あれ、なんか、怒ってる…? 「……駄目」 「え?」 駄目って、なんで? 伶と約束でもしてたかな、と思ったけど、心当たりはない。 考えてるうちに、また伶が口を開いた。 「…今日は、駄目。…連れて来いって、言われてる…」 「連れて来いって、」 「ゆうにい、怒ってた…」 ……あ。 一瞬、思考が止まる。 …どうしよう、すっかり忘れてた。
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加