密やかな恋

12/12
前へ
/105ページ
次へ
『ゆうにい』。 伶がそう呼ぶ人は、一人しかいない。 伶の四つ上の兄――宮内夕。 私に定期的に顔を見せるようにと厳命を下してきた人物でもある。 顔を見せるようにっていうのは、必要があってのことなんだけど…ここ最近、それを思いっきり忘れてた。 意図的に忘れてた、っていう部分も無きにしも非ずだけど…。 …多分、一ヶ月くらい会ってない気がする。 私としては、そんなに重要じゃないっていうか、会わないなら会わないでいいと思ってるんだけど、夕さんはそう思ってないだろうし…。 ……ああ、やっちゃった。 怒ってる、よね。 伶、『怒ってた』って言ったし。 夕さん、普段の態度もアレだけど、怒るとすっごく面倒なのに。 いや、その事態を招いたのは私なんだけど。 私は深く溜息を吐いて、渋々伶と一緒に帰ることにしたのだった。
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加