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「…とりあえず、上がったら…?」
私と夕さんのやりとりを黙って見ていた伶が、ぽつりと言う。
……うん、この上なく正論だ。
確かにこのまま玄関先で続けるのはどうかと思うので、場所を移動することにした。
というか、ここに来させられる原因になったことを済ませることが先だ。ここまで来たなら、抵抗する方が馬鹿らしい。
「夕さん」
呼びかけると、言わずとも察してくれたらしい夕さんが、部屋へと案内してくれた。
連れて行かれたのは、奥まったところにある、この邸にしては小さい座敷だ。
夕さんは大抵はここを選ぶから、結構見慣れた場所でもある。
伶は途中で別れたからいない。
多分、別の部屋に荷物でも置きに行ったんだろう。
用意されていた座布団に腰を下ろして、夕さんと向かい合う。
夕さんはいつも通り、不機嫌そうな無表情。
…だから、苛立つのわかってて、どうして続けようとするんだろう。
私の言い分を無視してまで、どうして。
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