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目を閉じる。
静かに深呼吸をして、『それ』を待つ。
額に、少し体温の低い手が触れた。
伶も夕さんも、宮内の人の特徴なのか、同じような手をしてる。
すらりとして綺麗な、少しひんやりとした手。
夕さんが触れているところから、体の隅々にまで『何か』が広がる。
温かいような、冷たいようなそれが、私の体を満たしていく。
いつの間にか慣れたその感覚に、複雑な気持ちになって、心の中で溜息をついた。
これが、夕さんが私に定期的に宮内の邸に顔を出すように言う一番の理由。
私にとっては大した意味を感じられない行為だけど、夕さんはそう思っていない。
本当はもっと頻繁に、ちゃんとしたやつをやりたいみたいだけど、私が拒否した。
…その必要性を、感じなかったから。
長いような短いような時間が過ぎて、『何か』がすうっとひき始めた。
時間を巻き戻すみたいに夕さんの掌が触れている部分に集まって、吸い込まれるように(というか多分、実際吸い込まれてるんだろう)消えていく。
少しの清涼感だけを残して、全ては終わった。
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