確定された未来の話

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「…終わった?」 伶が襖を開けてひょこっと顔を出す。 「ンなの見りゃあわかるだろうが」 それに対する夕さんの返答はにべもない。 …まあ、夕さんは大体いつもこんな感じなんだけど。 でも、『あれ』の後は少し、何かをごまかすみたいに荒れた口調で話すから。 …やっぱり、私のせい、なんだろう。 私の命のリミットを知って、一番過剰な反応をしたのは、夕さんだった。 二度と戻らないと公言していた家に戻ってまで、『それ』をどうにかしようとしてくれていることには、きっと感謝しなきゃいけないんだと、思う。 それがたとえ、私の意思を無視したものであったとしても。 いつか夕さんが自分で言ったように、エゴ以外の何物でもなかったとしても。 …それでもきっと、本当は、感謝すべきなんだろう。 だって、そんなことを考える人は、夕さん以外にいないんだから。
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