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「おはよ、りっか」
「おはよう、伶」
いつも通り感情に乏しい声音で挨拶してきたのは、幼なじみの伶。
『りっか』というのは、伶だけが呼ぶあだ名なんだけど、実際の読みとほとんど変わらないから、なんだか舌っ足らずのようにも聞こえる。
実際、ちゃんと『りつか』と発音できなかった小さい頃の伶がそう呼んでいて、今もそのまま呼び続けてる、というのが背景にある。
挨拶したきり動かない伶を不思議に思って見上げると、立ったまま眠り始めていた。
お休み3秒を地でいくのはすごいとは思うんだけど、正直登校した矢先からこうなのはどうかと思う。
「伶、立ったまま寝ちゃだめだよ。ほら、せめて荷物下ろして自分の机で寝なきゃ」
「…ん」
一応返事をして、伶はふらふらと自分の机に向かっていった。
伶は朝が弱いから、この時間帯は大抵ぼんやりしているんだけど、ただでさえ普段からぼやっとした印象を受けるから、朝はさらにその5割増くらいに見える。
…でも、その状態が神秘的に見えるっていうから、女の子の心理はわからない。
私も女の子だけど。
伶は顔なんて見飽きるほど見てる私でも、時々感心するくらい綺麗な顔をしてる。
あんまり感情が表に出ないからか、ミステリアスだとか神秘的だとか言われてる、らしい。
ちょっと小耳に挟んだことがあるだけだから、正確なところはわからない。
私からすれば単にぼんやりしてるだけに見えるんだけど、伶をよく知らない人からすればそんな風に見えるのだと知ったときは、人の見方というものの力にびっくりした。
何かのフィルターでもかかってるんじゃないのかな。
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