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だけど、予想もしなかった変化は、その日の放課後に訪れた。
「りっか、りっか」
「…伶?」
珍しく急かすように名前を呼ぶ伶を不思議に思って、帰りの準備をしていた手を止めて振り返る。
終礼が終わった途端、いつになく俊敏な動きで教室を出ていったから、何か緊急の用事でもあったのかと思っていたんだけど、この様子だと違うみたい――
「…………」
思考が、止まった。
目の前には、どことなく誇らしげな表情の伶(とは言っても、長い付き合いの私でも『そんな気がする』ってくらいの変化だけど…)と、ものすごく不機嫌そうというか、不本意そうというか、不愉快そうというか…とにかく、どう贔屓目にみても好意的でない表情の、男の子がいた。
そしてその男の子の顔…というか、全体的な雰囲気を、私は知っていた。
間違えるはずがない。
顔はちゃんと見たことがなくても、毎朝その姿は見ていたんだから。
私の好きな人――伶曰くの、『麗しの君』。
正にその人が、目の前にいた。
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