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「……ええと、あの」
何を言えばいいかわからなくて、意味のない第一声になってしまった。
好きな人の前で初めて発する言葉としては間違いなく不合格だと思う。自分でも。
気のせいでなければ、ただでさえ不機嫌そうな表情だったのが、さらに凶悪な目つきになったような…!
一応これがファーストコンタクトになるはずなんだけど、正直ときめきを感じる余裕がない。
目に殺傷能力があれば致命傷を与えられるだろうってくらいの視線に晒されてときめくことができるほど、私は根性が座っていなかったらしい。
「…遠矢」
「…?」
「遠矢水城」
「??」
「俺の名前」
不機嫌そうな顔のまま、何故か名前を告げられる。
「あんたは?」
「き、如月律花」
反射的に答えたものの、彼――遠矢くんは、ものすごく嫌そうに尋ねていた。
どう考えてもおかしい。不自然だ。
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