―序章―

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その時でした。 森田の横脇を、黒塗りの車高が低い乗用車が通り過ぎました。 ――勿論ながら車道を走って、ですが。 その乗用車は森田を通り過ぎ、百メートルほど行ったところで乱暴にUターン、無理やり歩道に乗り上がりました。 その乗用車は、歩道を歩く森田を、 森田「え?」 轢きました。 容赦なく。 ブレーキを掛ける様子もなく。 森田を跳ね飛ばしました。 跳ね上げられた森田は見事な弧を描いて、錐揉み回転の後にアスファルトの地面に落ちました。――気絶したようです。 ピクリとも動きません。 乗用車は森田に激突した所でゆるゆると減速し、数メートル進んだところで停車。 ――歩道に他に歩行者がいなかったのは不幸中の幸い、だったのでしょうか。 乗用車から、黒いスーツルックの上、真っ黒いサングラスを掛けたボディーガードにしか見えない二人の男が出てきました。 その二人組の男、雰囲気だけは森田に良く似ていますが異なる部分が二点あります。 ――まず、その襟元には政府関係者を示す徽章が付けられており、次にその腰にはサブマシンガンが吊られていました。
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