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町の中心部の大風車に近づくにつれ、人の数もだんだん増えてきた。大風車の下には露店がところせましと並び、なかなかの規模のバザーが形成されている。町には活気が溢れていた。
「さぁ寄ってきな!どこより安いよ~!」
「おい兄ちゃん!うちの武器を見ていかねぇか?いいのを仕入れたんだ!」
「あ、あはは~」
露店のおじさんから綾人にも声がかかったが、ずっと病院暮らしだった彼にはどうしていいか分からず、顔に汗と引き攣った笑みを浮かべながら足速に立ち去っることしかできなかった。
「ふぅ…いきなり騒がしくなったなぁ」
「ねぇ」
いきなり後ろから肩を叩かれ、綾人は飛び上がった。
「ひゃあっ!」
「…そんなに驚くことないでしょ?」
綾人に話し掛けたのは、黒髪で色白の美人だった。歳は綾人とそんなに変わらないように見える。何より印象的だったのは、その深紅の瞳だった。
(綺麗な人だなぁ…)
綾人は女の子をつま先からてっぺんまでぼーっと見つめた。そして、我に帰り慌てて敬礼をする。
「なっ、なんでしょう!?」
「……クスッ」
そんな様子を見て、少女は笑みをこぼした。
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