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「あの~…」
小さく笑い続ける彼女に、綾人はかなり控えめに声をかけた。
「ふふっ…何?」
「いや、僕君に声をかけられたんだけど」
「そういえばそうだったね。私のなまえは更紗(サラサ)。よろしく」
いきなりの自己紹介に焦りつつ、綾人も名乗った。
「僕は綾人。よろしく」
それだけ言うと、綾人は更紗を見つめたまま息を呑んで黙りこんでしまった。
それほどに更紗は美しい。しかし、それだけではない。人を引き付ける才能なのだろうか、道行く人は皆更紗を見た後必ずもう一度振り返る。これがカリスマというものだろう。
「君、初心者だよね?」
先に沈黙を破ったのは更紗の方だった。腰の後ろで手を組み、落ち着きのある笑顔で綾人に問い掛ける。綾人はただ頷くことしかできなかった。
「やっぱり」
「ど、どうして分かったの?」
綾人が尋ねると、更紗は簡単だよと言って綾人の胸に手をあて、顔を近づけた。
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