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その瞬間、楓は後ろに大きく跳んだ。いた場所にはクレーターができていた。
「華琳様を侮辱することは許さん!」
大剣を振り下ろした夏侯惇がそこにいた。隠そうともしない殺気は一般人ならば失神する者もいるのではないかというほど溢れていた。夏侯惇だけではない。夏侯淵は既に矢を番え、真名を呼ばれた曹操は巨大な鎌を取り出して楓に飛び掛かっていた。また、後方に跳ぶ。もちろん、梨音もそこにいたままだと巻き込まれるので、一緒に跳んだ。
「お待ちください、曹操殿。」
楓が立ったまま話しかける。
「ひとつ、ゲーム・・・・・・戯れ事をしませんか?」
その言葉に殺気を出しながらも3人は動きを止める。
「それは私たちに得なことなどないでしょう?」
「そんなことはございません。貴女方が勝ちましたら私の首でも何でも差し上げましょう。私が勝ったら先程の件は不問とし、願いをお聞きしてもらいたいのです。」
3人の顔をうかがうと否定もなければ肯定もなかったので話を続けた。
「3対1で構いません。梨音には一切手を出さないでもらいます。殺す気でいいですよ。ただ、こちらとしては殺す気など一切ありませんので、こちらが一本とったら手を出さないでもらいたい。まぁ・・・・・・」
私が勝つんですけれど。
挑発をする楓に1本の矢がとんできた。顔を狙った一撃を首を傾けてかわす。
「我々を侮辱しているのか!」
夏侯淵が声をあらげた。
「・・・・・・いいわ、のりましょう」
冷静に見える曹操も今からでも襲いかかりたいと思っていた。曹孟徳をこれほど侮辱した者はいなかった。その点では彼をある意味評価しているが、しかし侮辱されているのは許しがたい。しかも、1国の王に向かって・・・・・・。
「さぁ、早くあなたの狩りを始める合図を出しなさい」
曹操も挑発で返す。
「いつでも、どうぞ」
そう言う楓は武器を持たずにただ突っ立っているだけである。構えもとらずに両腕を下に垂らした状態だ。この男は、と曹操は戦慄した。私たち三国でも勇猛な将3人相手に更に武器無し。どう考えても普通なら一瞬でかたがついてしまう状況なのにどうしてこんな余裕を感じさせるのだろうか。
「来ないのですか?」
そんな考えは掻き消された。その問いに答えず、曹操、夏侯惇は楓に向かって駆け出した。
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